プロサッカー選手にとって、年末年始は蹴活の時期です。
いまこの瞬間も、イス取りゲームのように、世界各国でプロサッカー選手たちが、自分の居場所の取り合いを行っています。
世界中のあらゆるサッカー選手達が、来期の自分のプレーする場所を求めて、戦いを繰り広げていますが、その実態を詳しくお伝えします。
目次
移籍期間の存在
※2017シーズン、タイへ移籍した際の写真
まずお伝えしたいのは、それぞれの国のリーグによって、移籍期間というものが存在します。
この期間内でなければ、その国のリーグの選手として登録ができません。(=プレーできません。)
例えば日本だと、2019シーズンは1月5日~3月29日までが移籍の登録が可能な期間です。
お隣の韓国は若干ズレていて、1月4日~3月28日。
近年勢いのあるタイは、2018年11月28~2019年2月19日まで。既に移籍市場がオープンしています。
僕がプレーしたモンゴルは、4月1日~4月15日までと、少し遅め&期間短めです。
というように、移籍期間は国によってバラバラです。
よく聞くのが、「日本の大学を卒業してから、4月にタイでトライアルに行きたいです。」というパターン。
これは、どんなに頑張っても、移籍期間外なのでタイでは選手登録が不可能。
まずは、この事実を知って頂きたいです。
ちなみに、次にタイの移籍期間がオープンするのは、2019年6月のリーグ中断期間。
このように、サッカーの実力に関係なく、移籍ができる期間というものが決まっています。
実は、世界各国の移籍期間を調べることができるサイトがあります。
そのサイトがこちらです。
https://www.fifatms.com/itms/worldwide-transfer-windows-calendar/
※必ずしも、この日程通りとは限りません。あくまでも参考程度に。
年末年始はトライアルシーズン
※2016年、東南アジアへトライアルに出発する様子(成田空港)
上記で説明したように、国によって移籍期間は違います。
ですが、多くの国の移籍期間が被るのが、年末年始です。
毎年この時期に世界各国でトライアルが開催されています。
ざっくり言うと、アジアは12月~年明け。ヨーロッパは年が明けてからの一ヶ月間。この期間がもっとも活発な時期です。
ですので、この時期は移籍に関する情報が溢れています。
まずは、この情報を集めることが、移籍先を決める為の第一ステップです。
情報収集の手段は多く存在します。
・良い選手には、チームから直接オファーが来る
・エージェントにお金を払ってコーディネートしてもらう
・自分のコネクションを活かして、チーム関係者と直接連絡を取る
・過去、一緒にプレーした選手や仲の良い選手から情報をもらう
・飛び込みで、直接現地に足を運ぶ
・SNSを利用して、情報を得る etc…
その気になれば、やり方は無限に存在するでしょう。
特に近年は、SNSでの情報が沢山溢れているのが個人的な印象です。
例えば、Facebookで下記の写真のような情報を提示して、選手を募集しているエージェントが存在したり。
※ある国で、ヨーロッパ人GK、身長190cm以上、20-28歳の選手、給料は1500ユーロ/1ヶ月、食事と宿舎あり。という内容の選手を探している情報です。
チームがオフィシャルで情報を提示している場合も多々あります。
それがこちら。
※あるチームのオープントライアル情報。オフィシャルのFacebookページで情報を開示しています。
なかなか日本では考えられないと思うかもしれませんが、実はJ3やJFLのチームではHPでセレクションの情報を公開しているチームもあります。
例えば、J3藤枝MYFCがセレクション情報をHPで公開しています。
※これは去年の情報です。
しかし、Jの付く場所は狭き門であるのが現実です。(他の国も一緒ですが…)
このセレクションから契約を勝ち取る選手の数は、限りなく少ないです。
ですが、チャンスは意外と身近なところに転がっていることも事実です。
海外でチームを探す際の注意点
特に海外で起こりえるハプニングの1つとして、
「現地に行ったら話しが違う!」
というものです。
”ストライカーが欲しい”という情報を元に、チームのトライアルへ行ったら、
「やっぱり外国人選手はもう要らないや~。」
なんてことは、日常茶飯事です。(特にアジア)
「最初は本当に外国人選手のストライカーを取ろうとしていたけど、テストの前にチームの方針が変わったから…」
とか、
「監督の意向は外国人ストライカーが希望だったけど、オーナーは現地の選手で良いと言うから。オーナーの言うことは絶対なので…」
とか、
「そんなこと言った覚えは無いけど…」
とか。
こんな事が、当たり前のように起きます。
そのような状況でも、気持ちを切り替えて、次の可能性に向けてすぐに良い準備をする作業が求められます。
サッカーの実力は勿論のこと、精神的にタフでなければ、海外での移籍はなかなか実現しないのが事実です。
また、アジアの各国では単年での契約が多く、この時期はフリーエージェントの選手(無所属状態の選手)が溢れています。
ですので、チームのオープントライアルには、100人以上の選手が集まることも珍しくはありません。
しかし、各国リーグごとに”外国人枠”というものが存在します。
例えば、来期のJ1リーグは
【外国人枠5人+アジア枠1人+提携国枠1人】
となっており、外国人選手にとっては多めなので、例年よりチャンス有りです。
※Jリーグの外国人枠に関する詳細は、こちらのサイトをご覧下さい
僕がプレーしたモンゴルの外国人枠は試合に出場できるのが3人。(チームへの登録は制限なし)
タイは、3人+アジア枠1人+アセアン枠1人。(チームへの登録は5人まで)
このように、各国リーグによって規定は違いますが、外国人としてプレーするには外国人枠という人数制限があります。
海外プロサッカー選手達は、その少ない枠を争っています。
また、来期のJリーグのように、規定が変わることも珍しくありません。
選手は移籍先を探す際、ただ単にサッカーをプレーしていも、なかなか移籍先が決まりません。
その国の情報を頭に入れつつ、個人で色々と戦略立て、自分がプレーする場所を探っています。
PVとCVは必須
移籍先を探す際、必ず最初にチームやエージェントから求められるのが「CV」と「PV」。
CVとは、履歴書のことを指します。英語版のサッカー用履歴書のことです。
選手の基本的なプロフィールや、過去の在籍チーム、チームタイトルや個人賞の受賞歴などを記載しています。
まずは、このCV(履歴書)を元にチームが興味を示すかどうかが、大事なポイントとなりますので、CVは必ず用意しておく必要があります。
次に必要なのが、PVです。
PVとは、Play Videoの略。要するに、選手個人のプレー動画。
CVで興味を持ってもらい、実際のプレーはどうなんだ?という時に、この動画を参考にします。
いまは、世界中の選手がYou tubeに動画をアップロードしており、いつでもどこでもプレーが見れるようにして、自らのチャンスを広げています。
ちなみに、これが僕のPVです。
※2018シーズンのプレー動画
KAZUTAKA OTSU が、どういうプレーヤーなのか、この動画を見れば分かるように、工夫して作成しています。
CVとPVを見やすく工夫することも、移籍先を探す上では必要な要素です。
運とタイミング、そして実力
情報を得て、自らアクションを起こし、チームに興味を持ってもらい、実際にプレーを見てもらう。
この作業の繰り返しが、移籍先の見つけ方です。
(直接オファーが来る場合も、事前に自分のプレーは見られていますね)
そして、サッカーの実力以外の部分の要素が、移籍には大きく関わってきます。
過去に何度も移籍を繰り返している僕が言えることは、運とタイミングがとても重要です。
まずは、自分のプレーできるポジションがチームから求められていなければならないし、そこに外国人枠やビザの問題も絡んできます。
その問題をクリアできたとしても、移籍期間内での手続きが可能なのか。
「移籍期間の時間的に、明日の練習試合でプレーを見てチェックしなければ、登録が間に合わないけど、明日現地に来てプレーできる?」
みたいなこともありますし…
運とタイミングが、本当にとても重要です。
しかし、運とタイミングが合ったときに、一番必要なのがサッカーの実力です。
当たり前ですが、サッカーの実力が無ければチームから必要とされません。
その実力を身につけるために、日々のトレーニングを欠かさず、常にいい準備をし続けることが、移籍の際には一番大切です。
特に人数の多いトライアルでは、個人のプレーできる時間が限られます。
その短い時間で、自分の存在をアピールする必要があるので、技術面とメンタル面共にトップレベルであることが、必須と言えるでしょう。
まとめ
プロサッカー選手が海外移籍に必要な要素。
”サッカーの実力”があることを前提に、
・移籍を行う時期の選定
・情報収集
・精神的なタフさ
・CVとPV
・運とタイミング
この5つが必要な要素です。
この記事を読んで、僕のような海外組のサッカー選手に、少しでも興味を持って頂けたのであれば本望です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
大津一貴