とある8歳の少年。
彼は、友達に誘われて『サッカーチームに入りたい』と、親に頼んだ。
それがきっかけで入団したチームが、札幌の西区に所属する【山の手サッカー少年団】。
とある少年は、そのチームでサッカーに出会い、すぐさまサッカーの魅力に引き込まれた。
毎日サッカーに明け暮れる日々だったけど、それでも全然やり足りない。
授業が始まる前に朝早くからグラウンドに行ってボールを蹴り、休み時間にもボールを蹴り、放課後は練習でボールを蹴る。
練習がない日もボールを片手にグラウンドへ向かう。
どしゃ降りの雨が降っていようが、雪が降り積もる真っ白なグラウンドだろうが、そんなことお構い無しに。
とにかく、サッカーをしている時間が何よりも楽しくて、幸せだった。
そんなサッカー小僧だった少年は、サッカーと共にすくすく育つ。
そして、一生忘れない夏を迎える。
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小学6年生となった少年は、相変わらず毎日サッカーボールを追いかけ続ける日々。
しかし、所属していた山の手サッカー少年団は、西区の大会では勝てるけど、札幌市の大会になると1回戦、2回戦で負けてしまうようなチーム。
6年生となった最初の大会でも、1回戦で敗退。
そのたびに、少年はいつも悔し涙を流していた。
その大会が終わり、次は北海道大会に出場できる札幌予選の大会が始まった。
同じグループには、山の手サッカー少年団が1回戦負けした大会で、優勝したチームがいる。
北海道大会に出場するには、そのチャンピオンチームを倒さなければならない。
もちろん、周りの下馬評は
「前回大会のチャンピオンチームが北海道大会の切符を余裕で手にするだろう。」
子供も大人も、誰もがそう思っていた。
山の手サッカー少年団は、チャンピオンチームと、北海道大会の出場権を掛けて戦った。
下馬評通り、チャンピオンチームはめちゃくちゃ強かった。
しかし、山の手サッカー少年団の選手達は一致団結して、勝利を目指した。
いつも1回戦、2回戦で負けるようなチームだったけど、北海道大会に出場できるチャンスが目の前にある。
その壁は、当時の少年達にとっては物凄く高い壁だったけど、乗り越えられる可能性も僅ながら見えていた。
なので、持てる限りの全力を尽くし、必死にチャンピオンチームに食らい付いた。
失点されるも追い付き、更に失点されるも追い付きを繰り返し…
試合終了残り5分で、3-3のスコア。
チャンピオンチーム相手に奮闘を見せる。
そして、迎えた山の手サッカー少年団のコーナーキック。
1度は相手に弾かれたボールが、少年の目の前にこぼれてくる。
少年は、ワントラップした後に右足ボレーでシュートを放つ。
気が付くとボールはネットを揺らし、スコアは4-3と逆転に成功。
その少年を中心に、山の手サッカー少年団は歓喜に沸く。
そのまま試合が終了し、周囲の下馬評を覆して山の手サッカー少年団は、チャンピオンチームを倒して北海道大会の出場権を手に入れた。
その逆転ゴールを決めた少年は、まだ12年しか生きていない短い人生のなかで、初めて嬉し泣きをした。
今までは、試合に負けて泣いていたのに。
この少年の成功体験は、彼が本気で「プロサッカー選手を目指す」と決意した瞬間だったのかもしれない。
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その少年は、いま海外のチームでプロサッカー選手としてプレーしている。
少年の名前は「大津一貴」。
そう、自分のことです。
自分のサッカー人生の原点は、この成功体験をした【山の手サッカー少年団】にあります。
ここで、自分の全てが始まりました。
このチームに入ることがなければ、今の自分の人生は存在していないでしょう。
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この成功体験は2001年の話しです。
それから19年の年月を経て、先日山の手サッカー少年団に遊びに行かせてもらう機会を頂きました。
現在、山の手サッカー少年団の監督を勤める鴫原さんに声を掛けて頂き、自分がちょうど札幌に滞在しているタイミングが重なったこともあり、今回の機会を提供して頂きました。
自分がプロサッカー選手として、山の手サッカー少年団に戻ってくることができる日が来るなんて、19年前は想像もつかなかったです。
ただ、あの日からサッカーが好きな気持ちには変わりなく、今も本気でサッカーと向き合っているからこそ、実現したんだと思います。
鴫原さん、今回はこのような機会を提供して頂き、本当にありがとうございました。
また、札幌にいるときは遊びに行かせて頂きます。
そして、山の手サッカー少年団でプレーしている後輩の皆さん、これからもサッカーを全力で楽しんで下さい!
プロサッカー選手を目指したい人は、本気でその夢を目指せばいいと思うし、ほかに何か素敵な夢がある人は、その夢を叶えられるように全力を尽くして下さい。
それが、最高の人生を送るコツだと思います。
写真は撮り忘れたので、19年前・チャンピオンチームに勝った直後の様子を載せておきます。
大津一貴