同じチームメートの日本人、阿部速秀(以下:ヒデ)がシーズン途中だけど、昨日帰国した。
理由の詳細を自分はこの場では書かないけど、ざっくり言うとチームで色々と問題があって、ヒデは帰国せざる終えない状況になってしまった。
大卒1年目で、他国にもトライアルに行っていたが決まらず、プレーする場所を求めてモンゴルに流れ着いたらしい。
自分はシーズン前の3月からFCウランバートルと既に契約していたので、ヒデとの出会いは彼がうちのチームにトライアルに来たとき。
自分がヒデのプレーを見て抱いた第一印象は、「技術的には良いものを持っているけど、メンタル面で不安要素ありだな」と。
その第一印象通りだった。
FCウランバートルと契約してチームメートとなったけど、開幕戦ではことごとくチャンスを外し、その後の試合でも中々結果を残すことができずにいた。
良いプレーは随所にある。
ドリブルやパスも上手い。
だけど、ゴールや勝利という結果が付いてこない。
明らかに、メンタル面で上手くいっていない様子だった。
そのストレスも溜まっていたんだと思う。
とある試合で、余計なイエローカードを二枚もらい、ヒデは退場した。
自分は、ヒデの気持ちも理解していたつもりだった。
初の海外生活、ピッチ外でも色々と上手くいかず、チームでも個人でも結果が付いてこない。
フラストレーションが溜まらない訳が無い。
それを踏まえた上で、色々と個人的にヒデとは話しをしていた。
ヒデが成長し、結果を残せる選手になることが、このチームにとって絶対にプラスになると思っていたから。
でも、プロの世界では絶対にやってはいけないことがある。
それは、「途中で試合を捨てること」である、と自分は考えている。
退場した試合でヒデは、残り10分の状況で試合を捨てた。
試合終了後のロッカールームで、自分とヒデは殴り合いの喧嘩をした。
自分から先に手を出したので、きっと今の日本なら即効クビだろう。
ニュース沙汰にされて、サッカー界に戻ってこれないかもしれない。
結局、チームからは罰金だと言われた。(結果的に無くなったけど…)
でも、そこまでしてでも、自分は試合に勝ちたいと思っていた。
だから、強く言い放った。
「全力でやれないなら日本に帰れ」と。
だけど、リーグ戦の後期が始まって、少しずつヒデのプレーが良くなってきた。
それは、メンタル面で少し変化があったからだと思う。
元々持っていた良い技術が、ようやく試合で本領を発揮され始めていた矢先、ヒデは怪我をしてしまった。
結局、チーム内の問題も重なり、シーズン途中での帰国となってしまった。
オレは、やっぱり残念な気持ちが強い。
少しずつ良くなってきた兆しが見えてきた時だったから。
チームにとっても、ヒデが居ないと戦力ダウンだし、なによりも成長していく姿を見れなくなってしまったのが残念。
できれば、最後まで一緒にシーズンを戦いたかった。
だけど、次の目標に向かうことを選択したヒデのことをリスペクトしてる。
オレが色々嫌なことを言ったり、喧嘩もしたけど、オレは応援してる。
だから、もっともっと強いメンタルを手に入れて、その技術をもっと活かして、もっと上のカテゴリーで活躍できるように頑張れ!
ちょっと早めのお別れになったけど、ヒデと出会えたことで自分自身も成長することができたと思う。
自分もこの先どうなるか分からないけど、試合に出るときはヒデの分も背負って戦おう。
サッカーが繋げてくれた出会いに感謝。
大津一貴