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このコラムは、北のサッカーアンビシャスにて掲載された記事を転載したものです。
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北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは。
早いもので、2021年も残り1ヶ月となりました。Jリーグをはじめ、「春ー秋」の時期に開催しているリーグでは、各選手たちの去就に注目が集まる時期です。
また、欧州5大リーグのように「秋ー春」の期間に開催している国でも、年末年始は移籍市場が活発に動く時期です。
それは、私がプレーしてきたアジア各国も同様で、12月は世界各国でサッカー選手たちの移籍が1年で最も頻繁に行われる時期と言えるでしょう。
そこで今回のコラムでは、海外移籍の際に必須とも言われる「プレービデオ」についてご紹介します。
海外リーグに通算7シーズン在籍した私自身の経験談を踏まえつつ、動画の重要性について考察していきましょう。
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※私、大津一貴の2021年・プレービデオです。
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目次
サッカー選手のプレービデオとは?
サッカー選手のプレービデオ(Play Video)とは、その選手のプレーをまとめた「個人ハイライト・プレー集」のことで、普段は「PV」と省略されて呼ばれています。
現代はインターネットが発達し、各選手のプレービデオがYouTube上に溢れかえっています。
世界的に有名なスター選手の動画をはじめ、世間的にはあまり知られていない私のような海外組サッカー選手も同様に、編集した動画をYouTubeにアップロードしています。
なぜ、ここまでプレービデオを重視するのでしょうか。その1つの要因が、各選手の「移籍」に大きく直結するからです。
なぜプレービデオが重要なのか?
海外移籍をする場合、物理的な「距離」の問題が生じます。
国内クラブ間の移籍の場合、その選手をスカウトする際に直接視察することは、海外移籍に比べると比較的容易と言えるでしょう。
しかし、違う国のリーグでプレーする選手を視察するには、その国まで直接足を運ぶ必要があります。
例えば、Jリーグのクラブがブラジル人選手の獲得を検討し、直接現地へ視察に行くとします。
スカウトが日本からブラジルまで行くには、片道約24時間の移動と、一人あたり約20万円の飛行機代が必要です(大まかな計算です)。
その他にも滞在費やビザ代など、様々な費用と時間が掛かります。
選手1人に対して、その費用と労力をいつでも掛けられるようなビッグクラブであれば話は別ですが、これを実現できるクラブは世界でも限られた一部のクラブだけです。
そこで、重要な役割を果たすのが「プレービデオ」の存在です。
獲得を検討している選手のプレービデオを見れば、ある程度どのようなプレーヤーか把握することが可能です(もちろん100%把握することは難しいと思いますが…)。
わざわざ現地に足を運ぶ必要なく、その選手の実績や経歴を照らし合わせてオファーを検討することが可能になります。
コロナ禍で高まるプレービデオの重要性
移動制限が多いコロナ禍のご時世では、プレービデオの重要性が更に高まってる印象です。
それは、海外移籍に限らず、日本国内でも同様です。
高卒・大卒の選手がJリーグやJFL等のクラブの練習に参加できない状況に陥ってしまったことが影響し、アピール手段の1つとして選手側がハイライト動画を編集。
そのプレービデオをクラブ側に送信する、ということを実践した選手もいるようです。
また、世界中のプロクラブのセレクションやトライアルに動画でエントリーできる「アプリ」も存在します。
アカウントを作成すれば、選手を探しているクラブに自分のプレービデオを送ることが可能で、スマホ1つでチームを探せる仕組みになっています。
このように、サッカー界では「オンライン化」が一般常識となっているのです。
海外での実態は?
前述したとおり、各選手が個人でプレービデオを所有し、自分自身をアピールしていくのがサッカー界では常識です。
日本の場合、その年齢がようやく大学・高校年代の一部の選手たちに浸透し始めてきましたが、世界の状況は大きく異なります。
例えば、世界最大の「サッカー選手・輸出大国」であるブラジルでは、小学生年代の子供でも自身のプレービデオを作成し、少しでも良い待遇のクラブに加入できるチャンスを伺っています。
日本ではなかなか考えられないかもしれませんが、小学生の頃から世界を意識してがんがんアピールするのがブラジルでは常識です。
YouTubeやアプリに自身の動画を投稿し、世界中のサッカー関係者からいつでも自分の才能を発見してもらえるチャンスを伺っているのです。
また、私がプレーしてきたアジアについても実例をお伝えします。
例えば、とある欧州のクラブでプレーしていた日本人選手が、自身の動画と経歴のみで東南アジアのビッグクラブに契約が決まりました。
クラブ側が求めていた選手像とプレースタイルが一致したことが大きな要因だったようです。
それを確認するために利用した判断材料が、まさにプレービデオでした。
このように、海外移籍の際はプレービデオが非常に重要な役割を果たしています。
プレービデオにまつわるエピソード
ここで、プレービデオにまつわる私自身の実体験をいくつかご紹介します。
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①インドリーグからのオファー!?
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毎年のシーズン終了時に私はプレービデオをまとめており、その都度フェイスブックやツイッターなどにも連動して投稿しています。
数年前、そのシーズンの動画をSNSに投稿した翌日、見知らぬ人からメッセージが届きました。
相手はインド人の自称・エージェントで、「インドリーグでプレーしないか?」という内容でした。
その当時は、他の国でプレーすると決心していたことと、あまりにもプロフィール写真が怪しい感じの男性だったので(失礼ですかね…笑)、話を進めませんでした。
後にインドリーグでプレーした友人に話を聞くと、インドではSNSで見ず知らずの選手にオファーをすることは、比較的頻繁にあることだと話していました。
もし本当のオファーだったとしたら、私はインドリーグでプレーしていたかもしれませんね(偽オファーの連絡が来ることもあります。サッカー選手の方々は悪質な人に騙されないよう気をつけて下さい…!)。
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②プレービデオの質が悪くて選考外!?
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モンゴルのクラブに在籍中、移籍期間中に選手の選考について意見を求められました。
その際、選手の候補が一覧にまとめられていて、上から順に経歴とプレービデオをチェックしていったのですが…
とある選手のところで、「この選手のプレービデオは質が低いから除外ね〜」とマネージャーが一言。
その選手は、「動画の質」が理由で選考外となりました。
よくよく話を聞くと、「ホームビデオのような質でしか映像が残っていない=実績が無い選手」とのことでした。
それが本当に良い判断基準なのかはさておき….。
「プレービデオの質が悪い」という理由だけで、選考外になってしまうのが現実です。
それぐらい、動画は重要な判断材料であると言えるでしょう。
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③コロナが無ければ契約できた!?
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2021年、結果的に私はモンゴルリーグでプレーしたのですが、同年の上半期はコロナウイルスの影響によって、本当にリーグを開催できるか分からない状況でした。
そのため、他国でのプレーを視野に入れていた時期に、代理人の方を通じてプレービデオと履歴書をとある国のクラブに送っていただきました。
すると、「ぜひ来てほしい」という話に発展し、私自身も行く気満々で準備していたところ…。
同国でコロナウイルスの感染が急速に広まってしまい、同年のリーグ開催を断念するという結末になってしまいました。
もし、通常通りにリーグ戦が開催されていれば、私は違う国でプレーしていた可能性もあります。
「プレービデオの存在がその可能性が生んだ」と、捉えることができるしょう。
未だに、その国に行ってみたいという気持ちがあるのも、私の正直な心境です。
一番重要なことは「結果」
サッカー選手が移籍する際に「プレービデオが必須」と言われる理由を、皆さまご理解いただけたでしょうか。
もし、私自身がメッシのような選手だった場合、黙っていてもオファーが毎年届くでしょう。
しかし、大多数の選手はメッシのように毎年ビッグオファーが殺到する状況ではないはずです。
プロサッカー選手として生き残るためには、ピッチ外での「セルフマネジメント力」も必要だと、個人的には感じています。
そして、矛盾するかもしれませんが、一番大切なことはグラウンド上での結果です。
どんなに質の高いプレービデオが作成できたとしても、そこに映っているプレーが良くなければ、待遇の良いクラブへ移籍することはないでしょう。
大前提として、「結果を残すこと」が最も重要だということを、最後にお伝えしたいと思います。