『”裏”海外組 サッカー選手』
日本でもテレビ放送がある、ヨーロッパの人気主要国ではない国でプレーしている日本人サッカー選手のことを指す言葉。
自分も、モンゴル、ニュージーランド、タイでプレーした、立派な裏海外組です。
そんな自分たち、裏海外組サッカー選手には、とても大きな魅力と可能性を秘めています。
目次
世界各国でプレーする日本人サッカー選手
現在、海外でプレーする日本人サッカー選手の数は劇的に増えました。
ネットで調べてみると、ある記事では200人以上と言われていたり、別のサイトでは400人以上と言われていたり、正確な数字が把握できないほどの日本人が、世界各国でサッカー選手として活動しています。
日本でもニュースになる、イングランドやスペインといったヨーロッパ主要国でプレーしている選手の情報は、サッカーに関心が無い人でも知っている方は多いでしょう。
ワールドカップに出場するレベルの選手に関しては、試合に出場しなくてもニュースになりますね。
しかし、ニュースにはならない国でプレーする日本人サッカー選手も沢山居ます。
ヨーロッパに限らず、自分がプレーしたアジアやオセアニアをはじめ、南米、北米、アフリカ、、、
全世界でプレーしている日本人選手が居ます。
まずは皆さんに、この事実を知って頂きたいです。
裏海外組サッカー選手の価値
では、裏海外組サッカー選手の価値について考えてみます。
経験値
言葉が違う。気候が違う。文化が違う。。。
日本とは、何もかもが違うことだらけ。
時間や期日を守らないなんて当たり前!みたいな環境も沢山あります。
日本ではない環境で生活し、その場所でサッカーをプレーすること自体に、まずは価値があるでしょう。
それは、誰にでも経験できるものではありません。
Jリーグ(国内)で活躍する日本人選手でも、それは経験できないことです。
その経験を積んでいること自体、本当はとても価値があることです。
また、その国でプレーするには、その国のチームと契約する必要があります。
その契約を掴むまでにも、日本国内でプレーしているだけでは、経験できないことが沢山あります。
例えば、世界各国から選手が集まるトライアウト。
僕がプレーしたタイでは、1チームのトライアウトに100人以上の選手が受けに来るチームも存在します。
これが、タイの3部や4部というカテゴリーのチームでも当たり前になっているのが、リアルな現状です。
僕がタイで契約を勝ち取った時は…
そのチームには、既に1ヶ月以上チームの活動に帯同して、人数を絞られた外国人選手たちが10人居ました。
(僕は合流するのが1番遅かった)
その10人+自分で、外国人選手が契約できる、残り3人の枠を争いました。
僕は、運良くトライアル中の試合で活躍することができ、契約をゲット。
ということは、1ヶ月以上チームに帯同していたのに、結局契約できなかった外国人選手が8人も居るということです。
このような争いを勝ち抜かないと、海外ではプレーできません。
※トライアル中に行われたトレーニングマッチの様子
更に、チームから入団を許された後も大変。
まずは、書類上の手続きが済まないと、試合に出れません。
有名なのは、国際移籍証明書(ITC)でしょうか。
国を跨いでプレーするには、前所属のチームやサッカー協会(前所属の国)から、『移籍してもOKだよ!』という証明書が必要です。
この書類上の手続きが完了しないと、メッシのようなスーパースターでも、公式戦でプレーすることができません。
実際、僕もニュージーランドでチームへの入団が決まった時は、この書類の手続きが完了せず、最初の試合は出場できませんでした。
自分の力だけでは、どうにもできない部分も乗り越えないと、海外ではプレーできません。
チームと契約して、書類の手続き完了してからが、やっとスタートライン。
今度は、チーム内でのポジション争いが待っています。
現地の選手との争いは勿論のこと、その国やリーグによって”外国人枠”というものが存在します。
これは文字通り、1試合に外国人選手が出場できる人数のことを指します。
僕がプレーしたモンゴルでは、今年の外国人枠は3人。
年間通して、チームに所属した外国人選手は8人。
どんなに実力があったとしても、5人の外国人選手は試合に出れません。
この外国人枠をも争わなければ、試合に出場することができないのです。
この経験自体が、とても価値があるのではないでしょうか。
※海外でのピッチに立つまでに、様々な壁が立ちはだかる
新たな視点
Jリーガーでもない。
ヨーロッパの主要トップリーグの選手でもない。
日本の社会人やサラリーマンでもない。
学生でもない。
「お前は誰だ!?」って感じですね。笑
そうです、「お前は誰だ!?」なんです。
だからこそ、そのことに価値があるのではないでしょうか。
詳しく説明すると…
日本の常識に捉われていない、新たな人種の人間と言えるでしょう。
【”新たな視点”の持ち主】とも表現できます。
日本国内での一般的なサッカー選手は…
高校、または大学を卒業したらプロのカテゴリーに進みます。
その天秤に上手く引っかかった選手はJリーガー。
ダメだった場合は引退。一般企業へ就職。
引退したくなかったら、アマチュアのカテゴリーで働きながらプレー。
こんなところでしょうか。
しかし、裏海外組サッカー選手は、始めから引かれたレールに乗っていない人種の人間です。
自分のような元サラリーマンが居たり、現役大学生も居たり、日本のアマチュアリーガーだった選手も居ます。Jリーグチームをクビになったり、または自ら挑戦を希望した元Jリーガーも居ます。
このように、常識と言われるレールから、大きく外れている人間です。
だけど、海外でプレーするサッカー選手です。
今まで存在しなかった新たなレールを自ら作り、自分の夢を掴んでいる人間です。
サッカーの実力には関係なく、人間としての魅力が存分にあるのではないでしょうか。
実際、サッカー選手としての能力を飛び越えて活躍する人材も居ます。
自ら行動してきたコネクションを活かして、他の選手のエージェント業を行う選手。
英語だけに留まらず、マイナーな国の言語を取得する選手。
恵まれない国や地域に向けて、寄付等の社会貢献をする選手。
海外現地の様子や、サッカーの様子をブログやSNSで発信する選手。
You tuberとして、動画で発信する選手。
サッカー選手として活躍する一方、多方面に視点が向いている選手も居ます。
終身雇用の破壊を問われる昨今の日本社会に、一石を投じる存在になれるのではないでしょうか。
※モンゴルの子供達へ、ボールを寄付した様子
裏海外組サッカー選手の課題
次は、裏海外国サッカー選手の課題について考えてみます。
認知されていない
まず、裏海外組サッカー選手の存在が知られていないことです。
それは、純粋にサッカー選手としての実力が足りていないことも原因でしょう。
サッカー選手としての実力があれば、今よりもっとメディアに取り上げられるはずです。
しかし、それだけが原因ではありません。
まず、裏海外組サッカー選手の価値が、正しく評価されていないことです。
先にも述べたように、”特殊な経験値”や”新たな視点”を持った人間です。
その経験や視点を、日本で広める活動が沢山あっても良いのではないでしょうか。
裏海外組サッカー選手の講演会や、サッカー教室、メディア取材…
認知されるための様々な活動が、もっと頻繁にあるべきです。
その活動自体が0ではありませんが、自分の感覚としては、全然足りていません。
実際、現在のオフ期間に講演会やサッカー教室の依頼をしてみても、断られてしまったり、良い反応が返ってこなかったりもしています。
(自分の力不足であることは重々承知です)
ですが、自分の考えや気持ちに賛同し、ご協力してくださる方が居るのも事実です。
その事実を踏まえると、裏海外組の選手たちが、現在の日本社会に正しく評価されているとは思えません。
正しい評価を得て、もっと色々な人たちに認知される必要があるのではないでしょうか。
サポート体制
現在、トライアウトやチームへの練習参加など、海外への入り口をサポートする事業が沢山増えました。
それは、とても素晴らしいことです。
しかし、その入り口をくぐった後(契約を掴んだ後)のサポート体制は、まだまだ整っていないと感じます。
シーズンを終えて帰国し、次のシーズンへ向けての練習をする環境が不十分であったり、経済的な問題でアルバイトをしなければいけない選手がいたり…
サッカーに集中して取り組む環境を確保することが、なかなか難しいのが現状です。
その部分に関してサポートをする企業や団体が、今後現れても良いのではないでしょうか。
裏海外組の選手数が増えてきたからこその課題でしょう。
裏海外組の選手達がもっと活躍するためにも、サポート体制を整える必要があります。
アメリカ出身の選手に聞いた話しでは、国外の1部リーグに所属する選手を対象に、アメリカ国内のサッカー協会から、金銭面でのサポートを受けられる制度があるようです。
選手たちが、”サッカーに集中できる環境”という点では、とても良い制度ですね。
このアメリカでの制度のように、日本でも海外組選手へ向けてのサポート制度を検討してみてはいかがでしょうか。
※オフシーズン、自分の活動を応援してくれるSSS札幌サッカースクール
裏海外組サッカー選手自身の甘さ
海外への入り口をサポートする企業や団体が増えたことにより、日本人選手が海外でプレーすることのハードルが下がりました。
選手自身が、海外へチャレンジしやすい環境という面では、とても良いことだと思います。
ですが、”日本でプロになれないから海外に来ました~。”というマインドの選手が増えたのも事実です。
「日本よりFIFAランキングが低い国でなら、プロ契約できるだろう。」
「学生時代の先輩が海外でプレーできるなら、おれでも楽勝でプレーできるじゃん。」
「現地の選手が下手だから、余裕でしょ!」
このようなマインドの選手。
要は、考えが甘い選手です。
海外でプレーするということは、
その選手の評価=日本人の評価
となります。
ある意味、日本代表です。
その心構えで、日の丸を背負って戦うことができるのでしょうか。
当たり前ですが、答えはNoです。
僕がプレーした3カ国で、日本人選手が日本人の価値を落としているという話を何度か耳にしました。
その国で活躍し、現地でスーパースターになる選手が居る一方、残念ながら日本人としての価値を落としている選手が居るのも事実です。
それは、サッカーの実力だけではなく、人間力という部分を含めての評価です。
考えが甘い選手に限って、チームと馴染めずに活躍できなかったり、勝手に契約を破棄して帰国してしまったり、その国のルールを破ってしまったり…
日本人としての評価を落とし、本人が気付かないところで、他の日本人選手にも迷惑を掛けています。
そのような選手が存在するうちは、日本社会でも裏海外組サッカー選手の価値が認められることは難しいでしょう。
裏海外組サッカー選手自身にも、大きな問題があることを自覚する必要があります。
※今シーズン、モンゴルでプレーした日本人選手
まとめ
裏海外組サッカー選手には、しっかりと価値があり、様々な可能を秘めています。
・特殊な経験
・新たな視点
という武器を持ち、日本サッカーのみならず、日本社会をも変える可能性を秘めています。
それを実現するために、
・もっと認知されること
・サポート体制を整えること
・選手自身が改善すること
これらの課題を克服することが必要です。
「”裏”海外組」ではなく「海外組」と呼ばれるように…
まずは自分が、これからもサッカーと真剣に向き合っていきます!
海外組代表・脱サラ海外リーガー
大津一貴